近年、高出力レーザーは、より低い製造コストおよび運用コストを実現する新技術により、広く利用されるようになっています。 数年前までは、高出力レーザーの使用は見慣れないものでしたが、材料加工とマイクロマシニング分野においては一般的な工程と見なされています。
溶接や切削、付加製造、マーキング、刻印工程などの材料加工にはレーザーが使われており、より正確かつ高速で、より多様な加工が可能となっています。材料加工に加え、高出力レーザーは軍事用途や研究所での使用も増えています。
従来、高出力レーザーと言えばCO2励起レーザーでした。近年の技術発展とより高精度な加工に対する市場のニーズにより、加工業や研究分野、そして軍事産業を含むあらゆる高出力用途において、NIR ファイバーレーザーが急速にその役割を増しています。
レーザーは、出力が数百ワットから数十キロワットの範囲内であれば「高出力」と見なされます。材料加工用レーザーで圧倒的多数を占めているのは1070 nmファイバーレーザーで、稀に535 nmグリーンファイバーも使われます。CO2レーザーは材料加工の分野ではまだ人気がありますが、ファイバーレーザーのために徐々に消えつつあります。(ピコ秒および/またはフェムト秒のパルス幅の)超高速レーザーも精密加工作業用として採用されつつあります。
最も汎用的な高出力CWレーザーは、シングルモードの1 kWからマルチモードの100 kW超の出力範囲です。その信頼性、柔軟性、幅広いファイバー末端の互換性、コリメートレンズ、加工ヘッド(ガウシアンとシルクハット双方の型がついたもの)の用途が幅広いことから、ファイバーレーザーは材料加工産業に最適なレーザーとなっています。
重要なのは、多様な適用範囲と生産率のために、定期的な検査を行い、常にパラメータを監視しプロセス管理と品質保証を確実なものにする必要があるということです。
- 照準の大きさ
- ビームの形状/モード
- 焦点位置
- M2
- レーザー出力/エネルギー
レーザー出力/エネルギーは水冷却機能付属の従来のサーモパイルセンサーで計測可能である一方で、スポット径やビームの形状、M2 といった他のパラメータに関しては、歪みや分析機器の損傷なしに高出力レーザーパラメータを測定するための更なる技術進歩が必要となっています。
一般的に、測定には3つの方法が適用されます。
- ビームとの相互作用がない間接的測定。この技術は側面からのレイリー散乱を起こしたビーム光イメージに基づく技術です。Ophirビームウオッチにて用いられます。
- ピンホール付きスキャニングチップにビームのわずかな部分をサンプリングし、シングルエレメント検知器にビームサンプルを照射します。繰り返しピンホールを透過するビームをスキャニングすることでビームプロファイルの二次元画像ができます。この手法には可動式機械部品と水冷却装置を備えた大規模な装置が必要です。
- CCDビームプロファイラーを用いて何桁も光学減衰を起こさせた後、CCDビームプロファイラーを用いて直接測定を行います。新型の高出力レーザー用Ophir LBS-300HP-NIRビームスプリッタは最大5kW または15MW/cm2NのNIR(1000-1100 nm)フォーカスまたはコリメートタイプのレーザービームプロファイルの計測を可能にします。
極端な高出力の低減
LBS-300HP-NIRの使用にあたり、 照射ビームの一部が直角に取り付けられたウェッジ表面によって反射されます。ビームの0.0001% (1/106)未満がOphirビームプロファイラーカメラに反射され、0.1 %未満がOphirパワーメーターに反射されます。照射ビームの残り99.9% は透過します。これにより、最大出力が5kWまたは最大出力密度15MW/cm2のテスト中のレーザーの形状または焦点、ビームウェスト、M2、総出力の測定を可能にします。
LBS-300HP-NIRはどの形状のビームも一様に減衰します。入射ビームの偏光成分と全プロファイルを維持する一方で、ガウシアンまたは扁平型、ドーナッツ型ビームも減衰します。これにより照射ビームの高精度かつ高品質なサンプルを得ることができます。
LBS-300HP-NIRの外枠には、固定用に複数のねじ穴がありシンプルかつ多様な取り付けに対応します。Cマウント積層デザインは他のCマウント付属機器と互換性があります。互換的NDフィルター6個セットにより、ビームがカメライメージャーに届く前に最終強度調整が行われます。
このように、LBS-300HP-NIRはCCD ビームプロファイラーによる高出力レーザーのビームプロファイリングを可能にします。 極めて高いビーム減衰能により、高出力レーザー照射中は散乱したNIR 光線が周囲の照明光が強まることでビーム計測に干渉する可能性があります。散乱を最小限に抑える、カメラマウント 延長管を用いてビームプロファイラーカメラとの距離を50~100mm確保することが推奨されます
状況に応じたセットアップオプション
- 上での散乱を低減し、周辺光を除去するため、NDフィルタースライドと照射ビームカメラマウント 延長管を介して、Ophir SP920ビームプロファイラーに反射される0.0001%に満たない照射ビーム。
- オプションのOphir L30Cパワー/エネルギーセンサーに対する初期強度の0.1%。
ビームダンプ に対して6度屈折される照射レーザーの99.99%
- CCDでの拡散を減らし周辺光を除去するため、照射ビームカメラマウント 延長管を介して、Ophir SP920 ビームプロファイラ に反射される0.0001%に満たない照射ビーム。
99.9%が透過する一方で、オプションのOphir PD300R フォトダイオードに導かれる初期強度の0.1%。
性能
LBS-300HP-NIRの特徴および性能特定のため、様々な実証測定が行われました。
- ビームプロファイル精度
ビームプロファイルのサンプル精度を検証するため、LBS-300HP-NIRと従来のOphir LBS-300s-NIR アッテネータの比較試験がOphir BeamGageソフトウェアとカメラを用いて行われました。
LBS-300HP-NIRが百万分の一未満にまでレーザービームを減衰する一方、LBS-300sは千分の一に減衰します。同レベルのレーザー出力のために減衰を均一にするため、LBS-300sには追加の光学コンポーネントが使用されました。100Wガウシアンファイバーレーザーを用いて減衰を比較しました。結果、ビームプロファイル比較では、同様のプロファイルとビーム径を示しました。ビーム光路に光学面がより少ないことから、LBS-300HP-NIRの減衰後に受信したプロファイルははるかに鮮明となります。
- 高出力密度測定
2. 出力密度測定はシングルモード1KWファイバーレーザーの照準を絞ったビームを用いて行われました。1KWビームは340 µmと91 µmに焦点を合わせたもので、結果CCDカメラでは 出力密度2MW/cm2および最大30 MW/cm2のサンプル等量に達しました。
A: 340 µmビーム、2MW/cm2 出力密度
B: 91 µmビーム幅、2MW/cm2 出力密度
3. 高出力測定
高出力レーザーを用いたLBS-300HP-NIRの減衰特性を評価するため、5KWのマルチモードコリメートレーザーのビームプロファイルが測定されました。 結果として得られたプロファイルは、異なるレーザー出力のプロファイルと同様であることが示されました。
4. 加熱試験
UVFSウェッジを通して高出力レーザーを照射することにより、LBS-300HP-NIR のアセンブリ温度が上昇する可能性があります。表1では10分間の照射後の温度上昇が示されています。例えば、4kWの出力で温度が23.4˚C上昇しました。
高出力レーザー使用時は、LBS-300HP-NIRのオーバーヒート防止のため、測定時間を短くすることが推奨されます。加熱作業と時間の関連は表2に示します。例えば、2kWを15分間持続照射したのち、温度は20.4˚C上昇します。
高出力レーザーを長時間持続照射する際にも、LBS-300HP-NIRアセンブリのアクティブおよびパッシブ冷却が推奨されます。
結論
LBS-300HP-NIRで100万分の1の光学減衰を用いることによって、実用的かつ低コストでの高出力レーザープロファイルの測定が可能になりました。このことにより、ビームプロファイルやビーム径、M2、焦点位置の正確な測定が可能になりました。
LBS-300HP-NIRは、ビームプロファイラーと組み合わせることで、独立機器として、あるいはシステムまたはレーザー機器に組み込んで使用することができます。
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